全国の児童と一部の大人に衝撃を与えた、最終盤でのキュアスカイの闇堕ち。
正直な話、初視聴時は普通に怖くなって半泣きになったのですが、後々これについて改めて色々と考えてみると、やはりこの展開は本当にすばらしくかつ尊さにあふれている。
本記事では、このキュアスカイの闇落ちについて、自分なりに考えてみたことをまとめてみました。
※本記事はひろプリを49話まで視聴された方を読者に想定しております。
ネタバレにはくれぐれもお気をつけ下さい。
ひろプリ全50話はABEMAプレミアムにて配信中です。
ABEMAの公式サイトはこちらから
ヒーローの不安定性
キュアスカイの闇堕ち。
言うまでもなく、これはダークヘッドがお膳立てしたこと。
ですが、最終的な決め手となったのは、ソラ自身の「みんな(特にましろさん)を守りたい」という純心な想い。
一旦はましろが傷つくリスクを負いながらも、彼女と共に戦う覚悟を決めたソラ。
しかし、そうは言っても、ましろさんが傷つくなんて、やはり絶対に嫌だ。
ダークヘッドの謀略にまんまとはまり、ましろの命が本当に危険に晒されたとき、ソラの心は脆くも大きく揺らいでしまいました。
このときのソラの「ましろさんを失ってしまうかもしれない」という恐怖、そして、「自分がみんな(世界)を守る(守らなければならない)」というヒーローとしての強烈な自負心、これらが、ソラの心に「力」への盲目的な渇望を呼び起こし、アンダーグエナジーが彼女を乗っ取る「スキ」を生んでしまったのです。
いわば、ソラがこの1年で育んできた大切な人との絆、そしてヒーローとしての自らの理想像、これらが、最後の最後で皮肉にも暴走し、自分自身を闇に染める触媒として悪用されてしまったのです。
力をもとめ、破壊のために使う者、キュアスカイは、いい入れ物になる
ひろがるスカイ!プリキュア 第49話 から引用
ダークヘッドはこうした「絆」、そして「ヒーロー」のもう一つの側面をよく理解していました。
単なる悪人よりも、自らの高邁な理想に燃え、愛する人々のために戦う「ヒーロー」のほうが、往々にしてよっぽど危険な破壊者になりうる。
崇高な理想や誰かへの愛情は、また別の誰かを、そして自分自身を傷つける理由になりうる。
これまでの人類史の中で、愛や理想、正義のために立ち上がった、古今東西の「ヒーロー」たち。彼らは英雄であると同時に、多くの場合、残虐なテロリストでもあります。彼らの英雄的な偉業の裏で、本人を含めたどれだけ多くの生命が破滅に追いやられてきたことか。
ダークスカイは、今作のテーマ「ヒーロー」の、こうした本源的な危うさというか、もう一つの負の側面を見事に浮き彫りにしているように感じられます。
「ヒーロー」、「理想」、「絆」の強烈なアンチテーゼ。
ヒーローは希望の存在であると同時に、状況によっては簡単に悪魔に豹変し、自分自身をも破滅させてしまう、極めて不安定な存在なのです。
ヒーローがヒーローであり続けるために必要な存在
何だこの最高すぎる構図。
プリズムの勝ち誇った表情がえもいわれぬ。
信じて待っている人がいるかぎり、何度だって立ち上がれる。
きっと、それがヒーローだから。ひろがるスカイ!プリキュア 第49話 から引用
アンダーグエナジーの軛から脱したソラに、ましろが囁きかけた言葉。
ソラは自他ともに認める未熟なヒーロー。
稀有な才覚と高邁な精神性、そして行動力を備えた、非凡な少女であることは確かですが、同時に臆病で繊細で、色々と危ういところがある子でもあります。
でも、ヒーローなんてそんなもの。
上で考察したように、「ヒーロー」という存在そのものが未熟さと不安定さをその本質に内包しているのです。
だからヒーローは、幾度となく迷い、逃げ、しまいには暴走する。
これは、ヒーローがヒーローであろうとする限り避けられない、必然的につきまとう宿命です。
どれだけ成長を重ねようとも必ずつきまとう、有限な存在である人間が、無限の存在になろうとする過程で、どうしようもなく生じてしまう歪み。
そんな不安定なヒーローが、ヒーローとして輝き続けるために必要な存在。それが、「信じて待っている人」なのでしょう。
こうした人に出会うことができた人間は、きっとものすごく強靭になれます。
とても超えられそうにない強大な壁にぶつかって、「もうだめだ」と絶望し、自分を見失ってしまったとしても、諦められない。諦めるわけにはいかない。絶対に乗り越えて見せなければ。なぜなら、こんなに惨めで醜い自分を、それでも信じて待っていてくれる大切な人がいるから。その人の信頼に応えなければいけないから。応えたいから。
ソラにとって、ましろはまさにこうした存在です。
ソラが自分を半ば見捨てて戦線離脱したときも、アンダーグエナジーに呑まれて自分に殴りかかってきたときも、ましろは、ソラを1ミリも疑うことはありませんでした。
ましろは、ソラが自分に対してどんな醜態を晒そうとも、いつだって「ソラちゃんは必ず立ち直る」と本気で信じて、ソラを待ち続け、支え続けることができる子です。傍から見ると完全に正気の沙汰ではない。驚嘆すべき胆力と包容力、そしてソラちゃん愛。
そして、ソラはましろがこうして自分を待っていてくれる限り、ヒーローであり続けることができる。どれだけ打ちのめされても、強大な闇に呑まれても、「ましろさんが待っている」ただこの事実だけで、何度だって立ち上がることができる。つまるところ、最強なのです。
結論
ヒーローはひとりでは不安定。でも、信じて待っている人がいるなら、「ふたり」なら、無限の力でどんな強大な壁も越えて行ける。
これが、ひろプリが1年、いや下手したらプリキュアシリーズが20年かけて探求してきた「ヒーロー」の一つの解であるように、筆者には感じられます。
コメント